最初借りたのは30000円程度でした。友達と旅行に行ったとき、財布を忘れてきてしまったのです。

それまで全く友達との金銭の貸し借りをしなかったーーというか家訓的に「金銭の貸し借りは禁止」が厳しく敢行されていたので、できなかったのです。

頭の中は家にある財布を親が見つけないでくださいという祈りだけでした。当時一人暮らしでしたが、こういう時に限って親が遊びにくるものです。

見つかったら最後、おそらく「友達との外泊は禁止」という家訓が一行追加されることでしょう。しかしそれは杞憂だったようで、何事もなくことは過ぎました。

借りたお金も返して一件落着、といきたいところなのですがこの出来後のおかげで、自分の何かが目覚めてしまいました。「お金借り癖」とでも言いましょうか。

それまで前兆すらなかった自分の癖が、その30000円で芽吹いたのです。今まで抵抗があった金銭の貸し借りも全く抵抗がなくなり、どんどんと借りていくようになりました。

いろいろな友達からお金を借りて20万くらいになったころ、ついに恐れていたことが起きました。友達の自宅で飲み会をしていた時、たまたま親がやってきました。

お金を借りていた友達が、親の前で冗談交じりに「こいつに貸したお金まだ返ってきてないんですよ」と言ったのです。

友達は中学校からの友達で、酒の肴として軽い気持ちで口走ったのでしょうが、親の顔は見る見るうちに赤くなり、青くなり、ほぼ3日、休まずに尋問を受けることになりました。

今では我が家の家訓に「一人暮らしを禁ず」とあります。